入院記録 01

まずは入院した経緯を。

自宅の近くのアパートで学生が毎日のように友達と騒ぎ、警察官を呼んで注意してもらうも効果はなかった。
家主に直談判したご近所の男性もいたが現在も退去などの対策はとられていない。
朝から深夜まで延々と続く笑い声、叫び声。
耳栓をして頓服の抗不安薬を飲んで布団をかぶる日々を過ごし限界を超えた。

「火炎瓶投げていいですか?」と精神科の主治医に聞いた。
火炎瓶を投げてはいけないとわかっているから実行はしていない。それでもこれ以上我慢し続けるぐらいなら警察沙汰になってもいい。
火炎瓶投げたい。

火炎瓶 作り方 で検索するとマニアックな物から簡単に作れる方法まで表示される。
「ガソリンや灯油の入手は難しいからキッチンのオリーブオイルでもいいかな」と笑顔で話したが主治医は渋い顔をして「投げちゃダメ」と言った。
「水を入れて凍らせたペットボトルは? 生卵は? 」私の質問に「物を投げたらダメ。あなたが警察に捕まるよ」
捕まってもいい。留置場の方が今よりマシだ。

私は留置場を見たこともなく、刑事さんがカツ丼を出してくれるぐらいの認識しかない。カツ丼は刑事ドラマで見ただけなので実際はどうか知らない。そもそもカツ丼は取調べ室で提供される物なので留置場にカツ丼はない、多分。
そんなに食べたいか、カツ丼。
この時点で私は相当思い詰めていたと思う。

いくつかの相談機関に「火炎瓶投げていいですか?」と聞いてショートステイに入る手続きを始めた。

ショートステイを利用するには精神科主治医の診療情報提供書が必要と言われ、それをもらうために受診した。
「知らない所へショートステイするのはあなたには向かないと思うよ。一度入院経験がある僕の勤務先に入院しようか?」
安心して涙があふれた。
これで騒音トラブルから逃げられる。

入院準備に慌ただしく動き回り疲れ果てて病院に到着。
過換気発作を起こしかけて外来の待合室で頓服を飲んだ。薬は自己管理にならないと前回の入院で学んだので手元にあるうちに鎮痛剤も飲む。

外来での診察、検査、看護師さんからの既往歴の聞き取り、精神保健福祉士さんからの再度の聞き取り。
ぐったりと疲れたところへ裁縫道具、編み針、爪切り、針金ハンガーまで没収された。

入院当日の日記。
「退院したい。」

(続く)